藤間秋男の老舗企業訪問

第2回

株式会社 龍角散

代表取締役社長藤井隆太

のどを守って200年
“最大の危機からの再生”

龍角散ホームページはこちら
企業は社会的使命を失えば退場すべきだ。

※掲載情報は取材日時点のものです(2021年8月)

当時、龍角散は社会的使命を失っているから退場すべきだと思った。と語る藤井社長は就任した時が最大の危機であったという。
どんどん売り上げが落ち、新製品開発も失敗。そしてコストが上がり、いつのまにか負債が40億円。売り上げと同じくらいであったそうだ。
その危機のとき、藤井社長は「もう龍角散は社会的使命を失っているのではと、もしそうなら企業として退場すべきだ」と思ったという。
企業が社会的使命や貢献が出来なければ続ける意味がないと当初から思っていたそうだ。

しかし、お客様から「古いんじゃあなくて歴史があるんだ」「生薬漢方のしっかりとした専門性を持っている企業だ」「のどが元気になるんだ」などの声をいただいたことで、社会的使命があることがわかり、この会社は生き残れる会社だと感じたそうだ。

どの企業よりも迅速性と斬新さを磨けば生き残っていける

そこで藤井社長の強い信念で断行したことはのどに特化したメーカーとなり、それ以外はやらないということだった。やめる製品もあり、厳しい姿勢で改革を断行したため、社内で大きな抵抗にあったそうだが強行突破の連続で乗り切ったそうだ。
そして「どの企業よりも迅速性と斬新さを磨けば生き残っていける。」
という考えのもと、どの現場でも即決で決めていった。
龍角散を知らない人はいないと思うが微粉末生薬製剤の「龍角散」をはじめ龍角散ダイレクト、龍角散ののどすっきりタブレット、薬を飲むためのゼリー、今ではのど飴No.1の龍角散ののどすっきり飴まで医薬品メーカーとしての考え方がすべての製品に活かされている。

「真似せず真似されず」「余計な金は稼がない」「すべては社会貢献のために」という理念のもと、常に誰かの役に立っているかなと問い、儲けるだけじゃあダメと話す。

龍角散(八日分金五拾銭)
音楽家から8代目を継ぐ

もともと音楽家でありフルート奏者で、桐朋学園で学び学生時代から活躍をしていて、フランスにも留学した。その後、先代の父からの助言もあり、無関係な一般企業に入社し、約10年間勤務。
そんな中、先代が病になり、龍角散を継ぐこととなった。


創業からの歴史

創業は明治4年だが、もともと江戸時代から医者の家系であり
秋田藩主のために秘伝薬を改良したのが「龍角散」の始まりと言われている。

創業者や代々の経営者から学んだこと

時代の変化とともに一代たりと前と同じことはやっていないが、特に藤井社長は「人は老いるが企業は若返ることができる。」との言葉通り常に革新をしていかないとダメという危機感を持って行動している。


そして「継続するのが目的ではなく、無理して儲けようと思わないことが大事で、「役に立つのであれば、続けたらよろしい。」ともいう。
あくまでも社会貢献ができる企業という確固たる信念が藤井社長にはある。

明治維新に江戸に出て現在の地で始めたが、殿のために作った薬が原点だから商売ではない。だから儲けるための仕事ではないという創業の精神が今日にも受け継がれている。

八峰町カミツレ畑
製品へのこだわり

「真似せず、真似されず」
オンリーワンでなければやらない、やる必要がない。とも言い切る。そして、いかなる新製品よりも既存製品のリニューアルやコンセプトを変える方が効率がよい。つまり消費行動を変え、新しい需要を作ることを意識している。


販売戦略

海外への販売は戦前からやっていたが、今でも海外戦略は向こうのライフスタイルに龍角散の製品が合うかどうかであり、相手が欲すればやるが同じようなものがあるんだったらやらないそうだ。
中国ではインバウンド後にすごい勢いで伸びている。もちろん、中国からのオファーである。

広告宣伝

広告宣伝の継続は龍角散の経営方針であり、家訓は「普段はつつましくやれ、だけどやるべき時はやれ!」だ。
現在も積極的にインパクトのあるテレビコマーシャルを打ち続けている。全国区として知られるようになっただが、今もそれは変わらない。

事業承継について

長い間社長でいると過去の成功体験に頼ってしまうから危険である。30年くらいが潮時だと思っている。
やはりライフスタイルが変わってくるから30年くらいが一つのスパンだと思う。


藤間秋男からひとこと

藤井社長は製品をやめる時にはすでに次の手を打っているところに凄さがある。
そして常に危機感を持っている。
社長の音楽家として培ってきた何かがプラスしているようにも思える。
この会社は200年続いているが、これから先300年、400年、500年、残る会社になるかと思える。
なぜなら次の新しい世の中に合ったものを商品の改良で作り続けるというDNAを持っているからである。

事業承継に関して、次期社長は大変だと思うので藤井社長には宜しくお願いしたいと思う。

インタビュー動画

チャンネル登録はこちら

日本語版

英語版

前の記事

株式会社山本海苔店

次の記事

株式会社荻野屋