藤間秋男の老舗企業訪問

第6回 鈴廣かまぼこ株式会社

代表取締役社長 10代目鈴木博晶

老舗にあって老舗にあらず

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慶応元年1865年 創業156年

小田原の地で江戸の頃より一筋に続く鈴廣のかまぼこづくりは天然素材を使い、匠の技術を守る。

その一方で「魚肉タンパク」を科学的に研究し、更なる品質向上や新商品開発を進めている。 

弛まぬ挑戦を続け食卓を楽しく健康的にする鈴廣かまぼこ株式会社は慶応元年1865年、創業156年の老舗企業であり鈴木博晶社長は10代目となる。

※掲載情報は取材日時点のものです(2022年1月)
老舗にあって老舗にあらず

鈴木社長が若い時に祖父から渡されたメモに書いてあった言葉を創業150年に社是とした。
一見相反するふたつのメッセージだが
「老舗にあって」とは、どんな時代になっても決して変えてはならないことは頑固に守るという決心。
変えてはならないものとは商売に対する姿勢である。
「老舗にあらず」とは、変えなくてはならないことは勇気をもって変えるという決心。
それは仕事のやり方。現状に満足せず、よりよいやり方があると信じて絶えず改革していく姿勢である。
この二つの決心が鈴廣の行動の指針である

かまぼこの歴史

おそらく1,000年前には世の中に出てきていて900年前の宮中の資料に絵図でかまぼこが出てきている。

今のように板についたのは400年か500年ぐらい前からだそうだ。
板かまぼこの利点は形を作るのに便利だということもあるが、最も大事なことは自然の保存剤、保存料としての効果だそうだ。

かまぼこが持つ水分を適度に吸ったり吐いたりしてくれるので板がついていると日持ちが良くなる。

かまぼこの里

鈴木社長の両親は、これからはモータリゼーションの時代なので道路沿いに店舗構えて、そこで商売をするべきだと60年近く前に現在の小田原風祭の地に本拠地を移した。

現在は、かまぼこ博物館や商品販売の市場やレストラン、そば、甘味喫茶などがあり、その中でも「かまぼこ博物館の手作り体験教室」は人気で目玉となっている。
子供から大人まで自分でかまぼこやちくわをつくることができる。
その狙いはかまぼこを身近な存在に感じてもらう体験だそうだ。

社長の歴史

大学卒業後、水産会社にお願いをしてベーリング海で当時母船式の冷凍すり身を作る船に半年ほど乗船したそうだ。
そして原料となる漁場の現場を体験したり、加工の工程を経験したりとさまざまな環境を勉強させてもらったことが今に生きているそうだ。

かまぼこを科学する

今までかまぼこの製造技術は職人が感で覚えて技を伝承してきたが、様々な分析データを持ち込んで“かまぼこを科学”し、様々な指標を数値化することで技術の伝承が早まり品質も安定度を増した。

製品

板かまぼこはもちろんだがかまぼこを自分で作れる魚のすり身を乾燥パウダーにした製品を開発している。
水で戻して練るとノリのようなすり身になる製品だ。
また、魚のすり身と魚の油を使ったシーセージという製品もあり、健康には最高の食品だ。

魚肉タンパクのすばらしさ

日本人の食生活は2007年頃に畜肉と魚肉の一人当たりの消費量が逆転してその傾向に歯止めが利かない。
水産業界は、この20年、30年に魚の油のことばかりの栄養を宣伝きた。
「魚肉のタンパク」のすばらしさを積極的に宣伝せずにきた、「かまぼこはお魚の身を凝縮したものでタンパク質の塊だ。」と鈴木社長も力説していた。

SDGs

鈴木社長は「事業拡大は地球にやさしくない。それを正当化するためにSDGsを使うのは詭弁だ」という。
さりげなくやる、やれることからやると本社社屋も地下水の温度差を利用して電力量を半分にしたり、魚も獲れたものは全部使っていくという技術開発も進めていて、まだまだやることが多くあるという。

事業承継

両親は家庭でも仕事の話が尽きず、幼いころから継がなければいけないと、その気になるような環境が自然に作られていったようだ。
次の世代には鈴廣の精神や考え方を時間かけてきちんと渡していきたい。
しかし、ただ渡すだけではなく次の世代のニーズに合った変化は必要だと思っている。
また、適度な修羅場も経験させていくつもりだそうだ。

藤間秋男からひとこと

会社は良い会社、悪い会社があるのではなく良い社長か悪い社長かということに尽きる。
先代が革新をして更に鈴木社長が新たな革新をしてかまぼこの里を盛り上げているさらに小田原の地域貢献にも力を注いでいる。
やはり各代がそれぞれ革新をしていくことが老舗であり
この革新ができなければなくなってしまうのも老舗である。

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